COVID-19ハイスループットスクリーニングへの対応
COVID-19パンデミックは世界中の診断ラボに大きなプレッシャーを与えました。多くの施設では、試薬や実験器具が不足するなか、これまでに可能とされていた以上の量のサンプルを扱うことになったのです。この検査に不可欠なqPCR装置をすでに世界中のラボに提供してきたThermo Fisher Scientific社は、ハイスループット診断スクリーニングを可能にする自動化ソリューションを開発し、この試みに協力しました。
より高いスループットの必要性
Thermo Fisher Scientific社のジェネティックサイエンス部門（GSD）は、遺伝子検査用の研究製品を先導的に提供していますが、qPCRはそのポートフォリオの中でも主要な位置を占めています。qPCRがSARS-CoV-2の同定検査のゴールドスタンダードとして登場すると、多くのラボが臨床検査への協力を求めてThermo Fisher Scientific社にコンタクトを取りました。そこで、同社ではTaqPath™ COVID-19 Combo Kitを作製し、いち早くFDAから緊急時使用許可（EUA）を取得しました。これは大きな助けになりましたが、多くのラボが直面する検査の大幅な増加に対応するには十分ではありませんでした。そこで、GSDのゼネラルマネージャーElliot Shelton氏と研究開発担当ディレクターRobert Balog氏は、1日に最大1万件のCOVID-19検査を処理できる自動化ソリューションの実装を任されたのです。Balog氏は説明します。「当初、手動で行っていたTaqPathアッセイを出発点に自動化への道を考え、社内のリソースに目を向けたのですが、すぐに外部のパートナーと協業してノウハウを取り込むのが得策だということに気づき、さまざまなリキッドハンドリングの選択肢を調査開始しました。言うまでもなく、Tecanが最良の選択であることがすぐに明らかになりました」
課題へのアプローチ
問題の一つは、完全なワークフローを収容するのに十分な広さのバイオセーフティレベル2（BSL-2）エリアを有するラボが非常に少ないということでした。この問題を解決するために、Thermo Fisher Scientific社のチームは、規模やレイアウトの異なるラボに適合するように、2台の独立したFluent®オートメーションワークステーションを中心にAmplitude™ソリューションを設計しました。Balog氏は続けます。「最初のシステムFluent 1080プラットフォームは、BSL-2ラボで生きたウイルスを扱い、サンプル処理後、生きたウイルスが存在しない状態で、96ディープウェルプレート4枚に分注します。これらのプレートを、標準的なラボに収容できるFluent 780に移し、サンプルを1枚の384ウェルプレートにまとめて、RNA抽出、qPCR、解析を行います」
「2つ目の課題はソフトウェアでした。ワークフローを管理しデータを記録するためのソフトウェアを開発する必要があったのです。当社にはFluentのスクリプトと互換性のあるアプリケーション・プログラミング・インターフェイス（API）がすでにありましたが、私たちは、Tecanのチームの協力を得て、各クライアント向けにソフトウェアをカスタマイズすることにしたのです。その結果、ワークフローの両ステージを接続し、バーコード付きプレートからのすべてのサンプル追跡情報を保存する単一のLIMSを構築することができ、ラボでは1日最大8,000サンプルのワークフローをフルに活用できるようになりました」
危機に際しての迅速な展開
2020年9月に稼働したAmplitude Solutionは、お客様から絶大な支持を得ました。Shelton氏は説明します。「この課題を引き受けたとき、それがどのような結果になるかわかりませんでした。しかし、既存の技術で到達できるレベルを超えるハイスループットCOVID-19検査の需要があることは明らかでした。新たに開発されたシステムは、すぐにラボの一部に組み込むことができました。チームが迅速に注文に応じてシステムの設置のスケジュールを立てることができたのも素晴らしいことです。このような前例のない需要増の中で、機器の設置やユーザートレーニングで十分なフィールドサポートができたのも、Tecanなくしてはあり得なかったことです。Tecanのグローバルなプレゼンスがあったからこそ、世界各地での設置を迅速に完了することができたのです」
