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PacBio Sequel System

Genome sequencing / COVID-19

受賞歴を持つPacBio社のSequel Systemは、一分子リアルタイム(SMRT)シーケンシング技術を搭載し、正確性の高いロングリードを提供しています。

このOEMソリューションは、性能、正確性、コスト、チップの自動検出と排出、液面レベルの検出などの高度な機能を組み合わせたもので、私たちのアプリケーションに非常に適しています。

Paz Yogev, Staff Mechanical Design Engineer at PacBio

高品質なゲノムシーケンシング — ロングリードシーケンスの威力を発揮

次世代シーケンシング(NGS)はライフサイエンス分野で広く利用されていますが、一般的に使用されているショートリードのシーケンス法は、本来曖昧なもので、GC塩基対のバイアスが発生しやすいという問題があります。Pacific Biosciences(PacBio)社の一分子リアルタイム(SMRT®)シーケンシング技術を搭載したSequel® Systemは、より長いリードと均一なカバレッジで正確性の高い解析を提供します。この独自の手法は、高度なゲノミクス、全長転写シーケンシング、エピジェネティクスに理想的と言えます。SARS-CoV-2ウイルスを研究するラボでは、ウイルス自体の遺伝的特性の理解やCOVID-19に対するヒト免疫反応の特性把握に役立っており、その有用性は十分に検証されています。

 

ロングリードシーケンスによる解析の高度化

PacBio社のSequel装置は、ゼロモード導波路(ZMW)を充填したSMRTセル(基本的には非常に小さな反応容器)でDNAを直接シーケンスします。各ZMWの底部には、あらかじめDNAテンプレートを結合したポリメラーゼが固定されており、蛍光標識されたヌクレオチドが取り込まれ、シーケンシングが開始されます。ZMWは下方から照射され、減衰した光は各ZMWの底部20~30 nmに入り、ポリメラーゼが各塩基をネイティブ鎖に組み込む際に蛍光体を励起します。これにより、DNA合成のプロセスをリアルタイムで効果的に「観察」することができるのです。PacBio社プロダクトマネージメント担当シニアディレクターMarty Badgett氏は、このアプローチの利点を次のように説明します。「主な利点は、ロングリード、カバレッジの均一性、コンセンサスの正確性の高さです。正確性の高さは、システムエラーの低さとリードエラーのランダムな性質によるものです。例えば、約10倍のカバレッジで、ランダムエラーがデータからウォッシュアウトされるため、99.9%正確なリードを達成することができます」

 

スループットの向上

同社のオリジナルシステムであるPacBio RS IIは、SMRTセルあたり15万ZMW(約55,000リードに相当)を持ち、一度のランで最大16個のSMRTセルを処理することができます。しかし、NGSの普及とコスト削減が進む中、多くのお客様にとってスループットは依然として限界であったため、このことが2015年10月のSequel Systemの開発につながりました。このプラットフォームでは、1つのSMRTセルに100万個のZMWが含まれており、スループットは7倍に向上しています。シニアスタッフでメカニカルデザインエンジニアのPaz Yogev氏は、次のようにコメントしています。「Sequel Systemの開発にあたっては、PacBio RS IIで使用されているピペッターでは実現できない、さまざまなリキッドハンドリング機能を取り入れたいと考えていました。そこでソリューションをいくつか調査した結果、性能、正確性、コスト、チップの自動検出と排出、液面レベル検知などの高度な機能を兼ね備えたTecanのCavro®空気圧液面検知方式ピペッター(ADP)を選びました」

Badgett氏はこうも述べます。「このプラットフォームの発売後、私たちは次世代ケミストリーへの取り組みを始めています。800万個のZMWを含む高密度SMRTセルが今後Sequel II Systemに搭載されることになるでしょう。Sequelは、Cavro ADPのピペッティング性能もあって、この頃すでに信頼性の面で高い評価を得ていましたので、ハードウェアにはできるだけ手を加えないことにしました。そうすることで、プラットフォームの継続的な信頼性を確保できるだけでなく、市場へのシステム投入を早めることができるようになります」

 

性能の微調整

「目的は、装置のプロトコルを改良してシステム全体の堅牢性をさらに向上させることでした」Badgett氏は続けます。「例えば、ADPの自己診断・分析機能を導入してピペッティング性能の劣化を把握できるようにしたほか、お客様にトラブルが発生した際にリモート診断もできるようにしました。ADPの性能に不安を感じたことはありませんが、リモートモニタリングで、機器本体とは関係のない問題を解決するためにフィールドエンジニアがお客様のもとを訪れる回数を減らすことができるというメリットがあります。こうしたことは、ハードウェアに手を加えることなく、ADPに内蔵された診断機能を使って簡単に実現できました」

 

長期的なパートナーシップの構築

「Cavro ADPとはもう何年も一緒に仕事をしていますが、本当によくやっていただいています」とYogev氏はコメントします。「最初のSequel Systemの製造から、最新のSequel II Systemの改良に至るまで、非常に高い信頼性が保たれています。お客様が直面する問題は当社のフィールドサービスエンジニアが対応しますので、Tecanのチームに特別なサポートをお願いすることはほとんどありませんが、必要なときにはいつでも対応していただけると感じています。迅速な対応は研究開発においても重要です。当社のような比較的規模の小さい会社は、市場の要求にすぐに応えなければなりません。非常に短い装置開発サイクルを実現するためにも、Tecanとの関係はとても大切です。何か疑問があるときは、Tecanのハイレベルなテクニカルサポートを受けることができます」

 

COVID-19に幅広く対応

NGSはSARS-CoV-2の研究の最前線にあり、分子検査や免疫測定検査、ワクチンの開発を行うラボに貴重な情報を提供するとともに、in vivo(生体内)で見られる多様な免疫反応についての知見を与えています。微生物ゲノム・免疫・感染症検査の市場戦略担当ディレクターMeredith Ashby博士は、次のように説明します。「COVID-19の危機が世界的なパンデミックに進展することが明らかになったとき、当社の50以上のお客様拠点(その多くはウイルス学研究所ではない)が、この分野の研究に関心を示しました。そこで、この世界的な緊急事態に対処するための最良のツールをお客様に提供するために、私たちは発生するさまざまなシーケンスプロトコルのテストと検証を始めることにしました」

「パンデミックの進展に伴い、新型コロナウイルスはRNAウイルスとしては比較的変異率が低いことが明らかになっていますが、患者さんの免疫反応、つまり疾患の重症度には、大きな幅があるのです。そのため、この幅について調べるために多くのお客様がシーケンシングに注目するようになりました。Sequel II Systemの強みの一つは、最大長20kbのシーケンシングリードを提供する正確性の高いロングリード(HiFiリード)を実行できることです。これは、免疫反応に関与するヒトゲノムの高度多型領域や、ウイルスに反応して産生される抗体の多様性を調べる上で大きな利点で、有効なワクチンの早期開発に貢献することが期待されています。科学者コミュニティ全体がこの問題に取り組んでいるのは明らかで、私たちもその一翼を担えることを嬉しく思っています」Ashby博士はそう結びます。